5月21日 小満(しょうまん) ”Small Full Grain“ 冬を乗り越えた小さな実り。
― 万物が満ちていく季節 草木が輝きはじめる、五月下旬から六月初め。「小満(しょうまん)」は、天地の気が満ちあふれ、あらゆる命が充足していく頃を指す二十四節気の第八節です。(5月21日〜6月5日頃)
日本の南、九州の思い出
九州・佐賀に暮らしていた頃、この時季といえば梅雨前の爽やかな空気の中に、じわりと初夏の暑さが滲みはじめた記憶があります。田舎で広告関係の営業をしていた時のこと、麦刈の風景を撮影するために毎日天気予報を気にしていた思い出がよみがえります。
雨が数日降ると黄金色の麦がくすんで写ってしまうのです。雨の後の晴れ間に撮影のチャンスが訪れました。撮影後の編集で麦の色味などを工夫してみました。 今は変わったかもしれませんが、当時この辺りでこの時期に生産される麦は大抵大麦でした。
営業で上司と車で回っている時に、「ここらの麦はだいたいビール麦ばい(ビール麦だよ)」と教えられて知りました。地元の農家の方々もよく梅雨の前に「早うビール麦ば刈らんば(早くビール麦を刈らないと)」と言っているのを聞くことがありました。
確かその頃、鳥栖に麒麟麦酒の工場があったので、そこに納品されていたのかも知れません。そう思うと、ごくりと喉が鳴ってしまいました。「ビール飲みたいなあ」と真昼間から思ってしまう上司と私でした。
日本の北、北海道の今
現在、北海道・札幌では、ライラックが白や紫の花房をつけて、風に揺られながら甘い香りを漂わせています。札幌市の白石区の川下公園にはライラック園があり、何種類もの世界中のライラックが咲き誇り、来園者の目を楽しませてくれます。
札幌の初夏を彩るライラック祭りももうすぐ開催されるのでしょうか。北海道は長い冬の寒さに植物たちが辛抱強く耐えていきます。春が訪れ初夏となり、耐え忍んでいた反動のように花たちが咲き乱れます。
街路樹など至る所にたたずむアカシアの木も白い小さな花をいくつもつけて、甘い香りを漂わせています。義母から昔聞いた話で、アカシアの花は天ぷらにして食べることもあるのだとか。そうであれば、いつかチャレンジしてみたいものです。
そのように、南と北で表情は異なりながらも、それぞれの土地で確かに「小満」の季節を感じることができます。
七十二候 ― 小満の三つの候について
二十四節気はさらに三つに分けられ、初候・次候・末候と呼ばれます。一年でこれを繰り返すと七十二候。小満のそれぞれの候は、季節のうつろいをこまやかに詠んでいます。
初候 5月21日〜25日頃
蚕起食桑 かいこおきてくわをはむ
冬を越えた蚕が目を覚まし、桑の葉を旺盛に食べはじめる頃。日本の養蚕の歴史は古く、『日本書紀』にもその記述がみられます。絹糸を紡ぐ蚕は、かつての暮らしに深く根ざした生き物でした。静かな蚕室に葉を食む音が満ちるこの候は、命の営みそのものを伝えています。
お蚕さんについては、いずれどこかで話題にしたいです。
次候 5月26日〜30日頃
紅花栄 べにばなさかう
山形などの産地で紅花(くれないばな)が咲き誇る頃。鮮やかな橙から深い紅へと変わるその花は、古来より口紅や衣の染料として珍重され、正倉院の染織品にもその跡を留めています。漢方では活血・通経の生薬としても知られ、「紅」の一字に日本の色と薬の文化が凝縮しています。
今回は、紅花咲く頃を頭に思い描いてイラストを描いてみました。
末候 5月31日〜6月5日頃
麦秋至 むぎのときいたる
まだ暦の上では初夏ながら、麦にとっての「秋」がやってきます。前年の秋に蒔かれた種が長い冬を越え、ようやく黄金色に実る収穫の季節。
立夏の青い麦が黄金色に…お日様に感謝!
「小満」という節気の名はここに通じます ― 麦が豊かに稔り、大地が満ちる。そのささやかな充足こそが、この節気の本意です。
九州では梅雨入りを前に蒸し暑い夏の予感が漂いはじめ、北海道では北国の春をまだ謳歌している ― そんな対照的な二つの風景も、どちらも「小満」の多様な顔です。
全国津々浦々、季節の食材も路地ものが次々と顔を出すこの頃、陽の光をたっぷり浴びた自然の恵みを、お日様のエネルギーをいただくようにいただきましょう。
皆様が日々健康に過ごせるようにと願っております。


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